Art
モノ:ファクトリー

先に告知からしておきます。
10/29(土)から11/6(日)の期間に、西麻布のKREI open source studioというところで展示します。
【モノ:ファクトリーEvent ナカダイ西麻布工場】
日時:10/29(土)〜11/6(日)12:00〜21:00
会場:KREI open source studio 東京都港区西麻布2-24-2
入場料:無料
URL:http://monofactory.nakadai.co.jp/
会期中にも各種イベントやワークショップが開催されるので、お誘い合わせの上、是非ご参加ください。
いつか書こう、書こうと思っていたのですが、いい加減まとめとこうかと。
先月の9/23に多摩美術大学上野毛校舎で、「産廃サミット」というイベントが開催されました。リサイクル処理業者のナカダイさんが主催したイベントで、僕も出品したんですが非常に面白いムーブメントになってきているので、まずは概要から。
「産廃」とか「リサイクル処理業」というと、どんなイメージをもつでしょうか?
たぶん「汚い」とか「臭い」とか、ネガティブなイメージをもつ場合がほとんどだと思います(僕もそうでした)。そこにあるのは誰かが出した「ゴミ」なので、モノを作る人間にとってはある意味では正反対の場所です。僕もそれまで接点を感じることは特にありませんでした。
2回ほどナカダイの前橋工場にお邪魔したことがありますが、その時に感じた印象は真逆でした。徹底的に整理・分別された工場内は美大、あるいは僕のアトリエよりもよほど整っていて、嫌な匂いもしません。そしてキレイにまとまった、見たこともない素材が山のように・・・。正直言って、モノを作る人であの光景を見てワクワクしなかったら”モグリ”じゃないかと。
「ナカダイの廃棄物処分場にゴミはありません」
モノ:ファクトリーのWebサイトにある、この一文が印象的です。ほとんどの人にとって「ゴミ」とは「捨てるもの」であって、「回収するもの」ではありません。回収する側から見れば、それは「ゴミ」ではなく「資産」になる。ナカダイ・プロジェクト、ならびにモノ:ファクトリーは、その「資産=ソーシャル・マテリアル」をどう運用するかを考え、提示していくプロジェクトです。「産廃サミット」では、ナカダイの素材を使って制作された作品やプロダクトが展示されました。学生からプロまで幅広く参加し、FabLabからはワークショップも開催され、1日限りにも関わらず多くの来場者がありました。「モノ:ファクトリーEvent ナカダイ西麻布工場」はそのセレクト展で、開催期間も1週間になります。
んで、ソーシャル・マテリアルを扱う、1人の作り手としての目線。
なにか作品を作る時は、ほぼ例外なく「先にゴールのイメージ」があります。必要な材料をそろえ、スケッチや図面を描き、場合によっては同時進行で技術を身につけ、ゴールへ向かうのが一般的なプロセスです。逆にこのプロジェクトでは、「先に素材」があります。料理で例えるなら、前者は「レシピを基につくる」、後者は「冷蔵庫の残り物でつくる」感覚でしょうか。「残り物」というとありがたみを感じないかもしれませんが、料理のスキルや発想が問われるのは、むしろ後者なんじゃないかと。
思えば、美術の基礎教育において、道具や素材を限定するのは常套手段です。そこから徐々に間口を拡げて、最終的に自由な発想と手段で制作する様になります。ただし、初心者のための基礎教育に使われる道具や素材は、それ自体が「初心者に優しい」ものばかりです。冒頭でも書いた通り、そこにあるのは「見たこともない素材」ばかり。いわば珍味・珍種が詰まった、中・上級者向け業務用冷蔵庫です。ある程度の知識や技術、そして興味があればこそくすぐられる感覚。お互いがチャレンジャーのフェアな関係。「原点回帰」と「挑戦」の両方を味わえる、希有なプロジェクトだと思います。
もちろん、このプロジェクトは玄人向けの「閉じたコミュニティ」を形成するものではありません。ほんの少しの興味と、その機会さえあれば、玄人向けの素材を扱うのは初心者でも楽しいはず。そして玄人にはない発想で素材をいじり始める人もいるはず。そうした実験精神も持ち合わせたプロジェクトだと思います。
Aokigahara Mushroom Hunt

9月17、18日と2日間にわたって、ひょんなことから知り合ったアメリカ人写真家・映像作家の方と青木ヶ原樹海へ行きました。
ことの始まりはFablab関連で知り合った方からのお願いで、良くも悪くも「いわくつき」の場所を撮っている人が、念願の青木ヶ原撮影のために来日するので案内してほしい、ということでした。幸い僕も両日とも空いていたので、少し不安に思いながらも了承。おたがい初対面の外人同士で撮影旅行という、妙なスタートを切ったわけです。
その写真家・映像作家はSummer McColkleさん。アメリカ人女性らしい気さくな方で、日本人的な価値観も理解しておられました。八王子で待ち合わせてそのまま青木ヶ原へ。初日は天候も落ち着かず、雨が降ったりやんだりの繰り返し。
さて青木ヶ原。有名なとある「名所」なので、そりゃ最初はおっかなびっくりです。とはいえ、いざ現地についてみると何のことはない、ハイキングコースも程よく整備された綺麗な森でした。事前にwikiで調べた印象としては、「名所」としての由来はごく最近のもので、人為的にそうなってしまったような気がします。地元の方にとってはいい迷惑だな、と。
2日目はよく晴れ、絶好のハイキング・・・もとい撮影日和。Summerは「晴れ過ぎwww!これじゃ狙ってる雰囲気が出ない!」と言ってましたが、そう都合良くいかんわな・・・。2日間しかない撮影チャンスなので、バリバリ動きます。彼女が動画撮影している間、僕もヒマなのでそこらにあるモノを撮影。
そんな中、木漏れ日のスポットライトを浴びた様な真っ赤なキノコを発見&パチリ(写真上)「作りモノか!」ってぐらいドラマチックに撮れたことに気を良くし、その後はキノコばかり撮ってました。
青木ヶ原は少し不思議な森で、非常に静かです。まずセミなどの虫が鳴いてない。鳥もほとんど鳴いてない。風で木の葉がかすれる音と、遠くの車道から聴こえてくる車やバイクの音ぐらいです。また花もほとんど咲いてませんでした。季節にもよるんでしょうが、自然なのに風景が均一な印象です。「こりゃたしかに迷いやすいな」なんて思ってると、キノコが目立ってくる。他にはないそのフォルムや色は、均一な風景の中ではひと際目立ちます。
キノコはさておき、青木ヶ原は天候さえ恵まれれば非常に良いハイキングスポットです。ある程度整備されたコースから、自然が色濃いけもの道のようなコースまであります。ルートさえ外れなければ、そうそう嫌なことも危険なことも無いでしょう。秋の行楽にオススメです。
あ、ちなみに「キノコ狩り」はしてません。勝手に取ると怒られます(てか、捕まります)。
Little Talks About Tools & Jigs

久しぶりの投稿(このイントロ増えてきた・・・)。
普段お世話になっている方から撮影機材の機能拡張を依頼されたのもあって(写真上)、今回はモノを作る人にとっては不可欠な「道具」について思うところを書いてみようかと。
デジタルかアナログかを問わず、製品として身近に流通している道具は多少なりとも汎用的なものです。単純に市場原理として、最低限の汎用性がないことには売れません。実に当たり前のことなんですが、我々の様なタイプのモノ作りをする人間は、この「汎用性」について真摯に考えないといけないでしょう。
現代アートにおいて、完全・完璧なオリジナルを創作するのは不可能に近いと言われています(特に哲学的な意味で)。とはいえ、我々のような若手にとっては、そんな一見「お先真っ暗」に見えるような話にいちいちヘコたれてもいられません。なので、「真性のオリジナル」が困難なら、せめて「新しいビジョン」につながるものを創作しようというのが、今現在のアーティストのスタンスといえるでしょう。
僕はここで、「道具とその汎用性」がキーになってくると思っています。
全ての道具には「作法」があります。作法は汎用性に基づいており、道具の製造元はその作法にのっとって道具の性能を保証しています。僕自身は、道具の汎用性はそのまま被加工物にも影響すると考えているので、作法に基づいて道具を使う限り、作られたモノもある種の汎用性の枠を超えることはありません。つまり、その裏をかいて「新しい作法」あるいは「作法の拡張」を実現すれば、出来上がるものは汎用性の枠を超えます(あまりに単純な帰結ではありますが)。
いきなり「新しい作法」を実現する(=イノベーション)のは簡単ではありません。社会的ニーズや生産性など、考慮すべきことが山ほどあるからです。逆に「作法の拡張」(=リノベーション)は比較的とっつきやすい。特に我々のような作り手にとっては、その道具を使う自分自身の、個人的なニーズを満たせばそれで十分だからです。
古くから作り手は、自分のニーズに合わせて道具の作法を拡張してきました。いわゆる「Jig=治具」です。デジタルに置き換えれば「プラグイン」といったところでしょうか?母体となる道具単体では作るのが困難、あるい不可能なために、作り手は工夫を凝らしてそのギャップを埋めようとする。治具はその結晶です。目的はあくまで治具を通して作られた「モノ」にあるので、治具自体に必要以上の耐久性も美観も必要ない。その時だけ働いてくれれば十分だし、他人に見せるものでもない。もちろん、一部の優れた治具はそのまま改良され、製品として流通しているものもあります。とはいえ、作業内容が限定的であればあるほど社会的ニーズからは遠のいていくので、そこまでいけばやはり自作するのが本筋でしょう。
単に便宜的であるだけでなく、道具の作法を拡張して得られる成果物は時に強烈な個性を醸し出します。市場に流通している道具(治具)を使うだけでは達成し得ない成果だからです。これが「新しいビジョン」への強力な手がかりになると思います。もちろん治具ありきで作品を作るわけではありません。ただ、母体となる道具の本質を理解していないと治具は作れません。「治具を作れる」ということは制作者の確かな理解と技術を意味します。
アートの世界では「素材と格闘する」という言葉をよく耳にしますが、僕はこの言葉は「道具と格闘する」と同義だと思っています。最近はそんなことを考えながら日々の制作をしています。
というわけで、次回は目下製作中の「¥10,000以内で撮影用レールシステムを作る!」をお送りします。
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そう言えば治具で思い出しましたが、同じ研究室で勤務する古屋和臣さん他4名の新進気鋭の写真家が、昨年秋に僕も展示したアキバタマビ21で展示します。実は古屋さんの作品「My Sputnik」の制作にあたって、三脚に取り付ける治具を制作しました。こちらも是非。
Obtains of trip
今回の旅で手に入れたものを紹介。
1. Art and Text / Aimee Selby [Edit, black dog publishing] 2009 / $45 @Harvard Co-op
タイトル通り、テキストを用いた現代アートの作品群をまとめた書籍。有名どころだと、Andy Warhol、Doug Aitken、Jeffrey Shaw、Vito Acconci、Barbara Krugerなど。300p近い大著で、図版も多い。Independent Diaspora Seriesの次作にはテキストを使う可能性が高いので、参考まで。
2. Architects’ SketchBooks / Will Jones [Edit, Metropolis Books] 2011 / $50 @MoMA Shop
名だたる建築家達のスケッチや模型、図面などを網羅。手書き、フォトコラージュ、CGなど手法が人それぞれで面白い。一見、建築とは何ら関係がないようなスケッチも散見でき、その人の頭の中を覗けるような良著。個人的にはいわゆる平面作品よりも、図面や楽譜など、あまり表には出ない類の制作物に惹かれます。立体物の加工の際に使われる「治具」を見ているような感覚で、着飾ることのない素な部分が見える気がします。
3. Memory / Anish Kapoor [Artist, Guggenheim Museum] 2009 / $10 @Guggenheim Museum Shop
特売で$10と、とにかく安かったもんで。Anish Kapoorは自分の好きな作家の1人です。作品展開の柔軟さとシンプルさが魅力でしょうか。自身の故国でもあるインドの顔料を作品に取り入れるなどの姿勢も非常に好感がもてます。
4. Guggenheim Museum (日本語版)[Guggenheim Museum] 1995 / $5 @Guggenheim Museum Shop
こちらも特売で$5。日本語版だからだと思いますが、日本人にとってはありがたい限り。Amazonで新品だと異常に高いんですね・・・w。所蔵作品を紹介する、いわゆるガイドブックではなく、世界的に有名なこの建築の成り立ちを描いた本です。Frank Lloyd Wrightが描いた図面や、施工途中の写真などが載っています。
5. Machines / Arthur Ganson [DVD] 2004 / $20 @MIT Museum Shop
Boston滞在最終日に行ったMIT Museumに展示されていた、Arthur Gansonのキネティック・アート作品をまとめたDVD。実物には当然およびませんが、キネティック・アートだけに映像で動きが見られるだけ良いかな、と。素材(ほとんど針金)とものすごく格闘している作家だと思います。
6. Tornado Tube [Toy] $3 @MIT Museum Shop
同じくMIT Museum Shopで購入した科学玩具。両端に適度に水を入れたペットボトルを付けると、中で渦が巻くというもの。面白そうだったのでなんとなく購入。学校に置いといたら学生の参考にもなるかな〜と?
7. Lets Do Business / Fella & G Money [Promo CD] $5 @Somewhere around Times Square, NY
ある意味では一番忘れられないシロモノ。NYの路上で押し売り同然で仕入れました。“$5”とありますが、これは自分の場合であって、相手と交渉次第で値段は変わってくるでしょう。最終日のレポにもある通り、彼らは$20くらいで売りたいところでしょうか(日本人と知っての値踏みの可能性あり)。内容はNYらしい王道のHiphop全22曲。
8. Coca Cola Can
日本にはない、アルミでできたボトル缶。一輪挿しにでもしようかと持って返ってきました。
他にもMITのTシャツやウィンブレなどもありますが、面白そうなのはこんなところかと。
New York : Day 3

Boston+NY旅行記6日目(最終日)
早いもので今回の旅も最終日に。同行した久保田ファミリー、古屋ファミリー、山本さん、平本くん、岩岡くん、川名くん、巾島くん、そして何よりコーディネートしてくださったSFCの田中先生に感謝。皆さんのおかげで、非常に濃密な旅になりました。道中で出会ったたくさんの人にも同じく感謝の念がたえません。
さて、最終日はまずメトロポリタン美術館(MET)から。わかってはいたけど、やはりものすごい量の展示物。一つ一つを丁寧に見てたら1日どころか、1ヶ月あっても足りないんじゃないかと思います。自然史博物館と同様、こちらも展示物に合わせて内装も千差万別。グイグイ引きこまれます。見どころはやはり、同館北側に位置するデンドゥール神殿でしょうか。ローマ帝国期の神殿が配置も実寸でそのまま大空間に納められている様は、圧倒されすぎて笑いすらこみ上げてきます。“Museum of Art”というだけあって、当然美術品のみの展示ですが、いわゆる美術館ともやや趣が異なり、日本的な意味ではかなり博物館に近い内容です。
午後はグッゲンハイム美術館へ。ここはなんといってもFrank Lloyd Wright設計の美術館そのものが見どころです。展示は印象派やキュビズム絵画がメイン。個人的にはカンディンスキーとデュシャンの絵画が好みですが、やはり建築にパワーがあり過ぎます。
その後NY Apple Storeに立ち寄ったあと5番街を抜けてTimes Squareへ。ここで事件が発生。
Photo by : F-Boogie
小生、NYで黒人3人にからまれるの巻(ここからは会話形式で)
n-A「Yoyo、CD“貰って”くれよ!」
私「ん、なに自分ラッパー?」
n-A「そうだ!どこから来たんだ?」
私「Tokyoだ」
n-A「Ohhh!!!Tokyoooo!!!名前はなんて〜んだ?」
私「Keisukeだ」
n-A「あ?」
私「Keisukeだ。K・S・K。」
n-A「OK、わかった。じゃあお前はK-Boogieな!」
私「・・・」
n-A「CDにサインしてやるよ!」
私「お前サインするほど有名なんかよ?(有名じゃね〜だろ)」
n-A「まぁな(ウソ)」
n-B「オレのもやるよ!」
n-A「おし、CD2枚で20$な」
私「あ?」
n-A「CD2枚で20$だよ」
私「冗談言え」
n-B「コイツが俺らのBossなんだぜ」
Boss「Ai, オレがBossだ」
(Bossはひとまず無視して)
私「ホントに曲入ってんだろ〜な?(CDの裏面を確認)」
n-A+B「もちろんだ!」
私「いいだろ、お前(n-A)のは買ってやる。お前(n-B)のはいらん。5$だ。」
n-A「はぁ?安すぎだろ!10$はよこせよな!」
n-B「オレのもサインしただろ?」
私「だからお前(n-B)のは頼んでね〜だろ?」
n-B「うん、まぁ、そうだけど・・・」
私「お前(n-A)も5$、That’s Itだ。」
n-A「オ〜、メ〜ン・・・」
とまぁ、こんな感じで彼らとは5$とCD1枚のDealに。謎のBossは結局なにもやってこなかったですね。ひとまず聴いてみました。
Audio clip: Adobe Flash Player (version 9 or above) is required to play this audio clip. Download the latest version here. You also need to have JavaScript enabled in your browser.
うん、まぁ、ちゃんと音は入ってるし、¥4ooちょっとでこれ以上なくアングラなHiphopアルバムを買ったと思えばいいか(22曲入り)。盤面にメルアドも載ってるんで、彼らなりのプロモーション活動ってことで理解しましょう。K-Boogieとかいうありがたい(?)アダ名も頂戴したので、その名義でリミックスして送り返してやろうかな(skitも入ってたし)。思えばNYはストリートパフォーマンスのメッカ。先日もSubway構内で小学生くらいの男の子が超絶的なオルガンを弾いて周囲から喝采を浴び、何人もの人がお金を箱に入れてました。彼らもなんとかデビューの糸口をつかもうと必死です。小生も音楽好きの端くれ、ポジティブに乗り切るのです。ちなみに、今回のやりとりは基本的に実話ですが、うまくコトが進んだのは“運が良かっただけ”かもしれないので参考にせず、同様のことが起こったら各位の判断で対応してください。
さて、旅の最後の夕食はChina Town内にあるベトナム料理屋へ。日本食を除くアジア系料理は、店にもよりますが日本より現地に近い味で美味しいところもたくさんあります。ここも日本で食べるより一層ワイルドな味で、好感がもてました。
旅の最後は酔い覚ましもかねてEmpire State Buildingへ。キングコングも登ったNYを代表する建物ですね。とにかく寒かったですが、86階がバルコニーになっています。鉄柵の隙間から生で見えるNYの夜景は、「ゴォォォ」という風の音がよく似合うスケールの大きな景色でした(写真上)。
計6日間のBoston+NYの旅もこれにて終了。なるべくたくさんのことを伝えようと1日ずつレポートを書きましたが、まとめきれなかったちょっとしたエピソードも多々ありました。というより、ほとんどがそういうコトの積み重ねで、文字に書き起こされていることは概要であり、ハイライトに過ぎません。たぶん、旅も人生もそういうモノ。
K Boogie in Times Square (photo by F Boogie)
New York : Day 2

Boston+NY旅行記5日目
今日は待ちに待ったアメリカ自然史博物館へ。子供の頃1番好きな施設で、確実に自身の人格に影響を与えています。ダイナミックな恐竜の骨格標本、実物大のシロナガスクジラ、杉本博司も写真に撮った数々の哺乳類のジオラマ。全てが懐かしく、同時に今見ても飽きない魅力があります。
規模や収蔵作品は別にして、基本的な部分で日本の美術館は欧米と比べても遜色無いように思います。逆に博物館は欧米に比べて大きな差を感じます。博物館というと展示物そのものに目が行きがちで、即物的な鑑賞をする場所という印象がありますが、良い博物館はむしろ“背景”を重視していると思います。
全ての展示物には起源があり、元あった時代や場所をどうイメージさせるか。ある意味で、同時に意外なことに、博物館は“ファンタジー”を演出する装置だと言えるでしょう。芸術作品が展示空間にこだわるように、博物館の展示物も空間を選びます。そしてそれはそう単純なものではありません。ライティングや配置、ポージングはもちろんのこと、展示物の格に見合った“しつらえ”が重要で、この点は見方によっては美術館よりも徹底されていて、一様ではありません。あえて悪く言えば、ホワイトキューブは作品を選ばない“無難な”展示空間ですが、博物館は展示物に合わせた内装、つまりは建築から良し悪しが左右されるので、非常に入念な計画が求められるはずです。アメリカ自然史博物館の内装は部屋ごとに違い、まるでキメラのような建物です。それらの条件が整って初めて、展示物から荘厳な“背景”を感じとることができるんじゃないかと思います。
面白かったのは、内容によってはあえて展示物を“見にくくする”演出があるということ。背景を感じさせる基本的な演出はリアリティーの徹底ですが、そのためにあえて“見にくくする”。それがかえって見る側の想像力を膨らます。こうした判断は、日本の博物館では目にしたことがありません。
一方で、美術館的な演出方法が導入できる余地もあるな、とも思いました。同時に物量で太刀打ちしづらい日本の博物館を底上げする方法として、そうした導入が最も適しているのではないかとも思います。内容は“博物”ですから、美術が含まれてもいいでしょう?
明日はMETとグッゲンハイムへ。こちらも楽しみです。
New York : Day 1

Boston+NY旅行記4日目
早朝、Bostonのローガン空港からNYのラガーディア空港へ。少し揺れましたが、あっという間です。
Yellow CabでひとまずMSG目の前のホテルへ行き、荷物を預けたらグラウンドゼロまで徒歩で散策。けっこう距離がありますが、この街で渦巻くエネルギーが歩みを軽快にさせます。東京も劣らず大都市ですが、このエネルギーは別種のモノです。現場でないとわからない、けど誰にでもわかる“何か”があります。
途中で昼食をとりつつ、Chelsea、Greenwich Village、Sohoを通り抜けてグラウンドゼロに到着。子供のころに登ったこともある、空にも突き刺さらんばかりの“あの”巨大な建造物が、無い。個人的には少し泣きそうになりました。さすがに10年も経つと周りの活気も元通りですが、近くの食堂に入ってみたら事件当時の店内の写真が飾られてて(商品棚に寄りかかってうなだれる、ホコリまみれの警察官の写真)、心の奥底に残る傷跡を感じます。再開発についてはミレニアムタワーが有名ですが、敷地内には4面から落ち込む滝のモニュメントなども建てられるそうです。おそらく事件後にポッカリ四角く穴の開いた状況を模していると思われます。
グラウンドゼロを離れて地下鉄でMoMAへ。ゆっくり見る時間がなかったのは残念ですが、Jasper Johnsの“国旗”、Andy Warholの“キャンベルスープ”、Jackson Pollockの“アクションペインティング”など、こんなキーワードからもすぐにイメージできるほどの代表作の数々。個人的には建築・デザインのエリアが面白かったです。学生時代に研究したBuckminster Fullerの建築図面やドーム模型、ジョン・ケージの楽譜も展示されています。アイ・ウェイウェイの作品(紫禁城、ホワイトハウス、エッフェル塔、モナリザに中指を立てる自身目線の写真作品)も非常に“らしくて”面白かったですね。アメリカのアートシーンはヨーロッパよりエモーショナルな側面が強い気がします。ジェンダーやポリティクスを扱った作品が多く、市民のウケもいいようです。
閉館に追い立てられるようにMoMAを出て、ショップで今回2冊目の本を購入(Architects’ Sketchbooksという本、日本未発売だったんですね)。どちらも重いので、スーツケースが重量オーバーにならないか心配です。
余談ですが、この週末はNBAもAllstar Weekendでした。自分が見ていた頃とはメンツがずいぶん代わりましたが、アメリカ国内の注目度・熱狂は相変わらずです。
Boston : Day 3

Boston+NY旅行記3日目(Boston最終日)
Boston滞在最終日は概ね自由行動。ホテルのロビーに集合してからMITへ。1,2日目とはうって変わって、寒風吹きすさぶBostonらしい冬の1日。
まずはEero Saarinenが設計した大学構内にあるチャペルへ。壁面が波打ったレンガ造りの、アンティークさと現代っぽさがうまく融合した建築。結婚式などでは建物外周に水を張って、壁面の明かりとりからゆらゆらとした反射光が差し込む様になっています。備え付けのオルガンを使って久保田先生が即興ライブをする豪華なひととき。
次は教会から北にある、学生自身が運営するFablabの工作室へ。町工場などから使われなくなった工作機械を引きとって、自分たちで管理・運営しています。こちらは設備こそ少々劣るものの、メディアラボの工作室以上に活気のある、よく使い込まれた工作室でした(それでもウォーターカッターなどがあるんですが)。印象的だったのは、たまたまその時にCNCフライスを使っていた学生の作業時のこと。通常、CNCフライスはマニュアル(ハンドル)かオート(NC)を切り替えて使いますが、その学生は謂わば「半自動」で使っていました。X軸ハンドルをクルクル回して、その回転速度に合わせて切削プログラムが進行する、といった具合でしょうか。色々説明をしてくれたスタッフさんに聞いたら、“Track Mode”という特殊なモードだそうで、素材や刃の太さ、切削形状を見ながら自分で速度をコントロールできるので、一番最初のテストモデルを作るときによく使われるそうです(それで上手くいけば後は全自動で)。日本のCNCフライスにもあると思いますが、マニュアル/オートをつなぐ格好のシステムがしっかり使われています。
次は、そこから更に北にあるMITミュージアムへ。今年はMIT設立150周年だそうで、その間にMITで研究・開発された全てのものが展示されていました。Polaroidや各種ロボット、超高精細ホログラム、Intelのチップ・LSIのウェハース等々・・・。面白かったのは、Arthur Gansonというキネティックアーティストの作品展示。ティンゲリーの影響が色濃く残るフォルム、ゆったりとしたリズムに、ウィットに富んだ構成が素晴らしい。ハイテクが印象のMITで、まさかこんな作品群が見られるとは思いませんでした。
昨日行きそびれたハーバードの生協に寄ったあとは、MITのStata Centerへ(写真上)。設計はFrank Gehryによるもので、講義などに使われているそうです。エントランスにはアニッシュ・カプーアの最新作があり、建物全体も荒川修作の“天命反転シリーズ”を彷彿させる迷路のような構造。自分が今どこにいるのか全くわからず、慣れるのにも時間がかかりそうです。
夜はとうとうBoston名物のロブスターを堪能。エビで腹が膨れるなんてことはそうそうありませんが、決して大味ではなく食べごたえ抜群です。
Boston : Day 2

Boston+NY旅行2日目。
今日は主にMITメディアラボとハーバードGSD(Graduate School of Design)に。午前中は、世界各地に点在するFablabのグローバル・マネージャー Sherry Lassisterさんに、MITメディアラボ内の案内をしてもらいながらFablabに関するちょっとしたレクチャー。
MITメディアラボの施設はとにかく“圧巻”の一言。工作室ひとつとってもレーザー加工機や3Dプリンターはもちろん、ウォーターカッターや6軸CNC、巨大なShopBot CNCなど、多摩美にも欲しい機材がひと通り全てあります。各種のNCマシンの豊富さから見てとれるように、やっぱりデジタルデータからそのまま加工するのがスタンダードなんですね。また、精度は不明ながら非常に小さな素材を加工する特殊な加工機や、秋葉原の電気街をそのまま持ってきたかのようなギークな素材室など、くすぐられる場所がいくつもあります。多摩美で工作スタジオを管理する身として感心したのは、非常に綺麗な状態が保たれたまま、ちゃんと“使われている”こと。このへんの舵取りというのは結構難しくて、ルールを厳しくしないと汚れていく一方、逆に厳し過ぎると使われなくなるというジレンマがあります。MITの場合は細かなルールはゆるいものの、清掃だけは非常に厳しくしているそうです(守られないと出禁)。それでも時折小さな工具は無くなっているようで、管理するスタッフの怒号が飛ぶこともたまにあるとか。このあたりは残念ながら万国共通なんでしょうかね。
昼はMITの大学生協で昼食+お買い物。アメリカの大学は母校のグッズが豊富で、ペン一本からコートまでMIT印がいっぱいです。それでいてカッコいいデザインの物は多いし、ラルフローレンやチャンピオン等のブランドが制作についていて羨ましい限り。多摩美も美大なんだから、各科で制作された良いものをどんどん商品化して売ったらいいのに・・・。
午後はMITメディアラボの一角にあるHigh and Low Tech Groupを訪問。グループを率いて、自らもLilipadの開発者であるLeah Buechleyさんの開発記を聞きながら、在籍学生とも交流。さすがにアメリカ、みんな自分のプロジェクトをプレゼンするのが積極的です。MITメディアラボの特徴的なところは、制作環境の充実もさることながら、そこらじゅうで作品が常に起動していて、制作者はいつでも自分のプロジェクトをプレゼンする準備を整えていること。「スポンサーがいつ来るかわからないから」と言ってましたが、いつでも”臨戦態勢”にあるのは個人的にも見習いたいところです。自分も負けじと彼らにプロジェクトを解説したら、結構な好感触が得られました。
MITのスゴさばかりに目がいきがちですが、日本も環境としては負けていません。秋葉原や東急ハンズ、その他サービス良好なネット通販を考えても、素材の供給源については日本の方が格段に上で、そのあたりは彼らも非常に羨ましがってました。
ハーバードGSDに移って、今度は有名なFablab Houseを制作したDaniel Ibanezさんのプレゼン。プロジェクトそのものからプレゼンまで、隙がなくて脱帽の一言。コンペのレギュレーションに苦闘しつつ、自分達のやりたいことをいかに具体化するかといった話は、どれもダイナミックで刺激的でした。納期を短縮するために使われなくなったロボットアームを中国から安くで購入して加工させたり、フレキシブルな太陽発電パネルを自分たちで開発したり。完全に行動力の賜物といったところですね。上の写真はハーバードGSDのアトリエ。見切れていますが、左側にも同じくらいのスペースが広がっています。全ての学科の学生(600人)がここに自分のスペースを構えて、日々制作しているとのことです。土地があるって羨ましい・・・。
夜はまたMITメディアラボに戻って、在籍している日本人研究員の方々が行っているMedia Bandの収録へ。小生もちょっとだけ出てます。皆さん本当に真剣にクリエイションとFablab Japanの設立について考えてます。
ボストンも残すところあと1日。早いものですが、この調子でバシバシ吸収して帰ろうと思います。
Boston : Day 1

Boston+NY旅行1日目。
午前中はBostonから電車で小一時間ほどの、Rhodes IslandはProvidenceにあるFablabを視察。AS220という母体のもとで運営されてます。AS220は最新のデジタルファブリケーションに限らず、活版印刷から食堂まで、およそ文化と名のつくものならなんでもやってそうな組織。貪欲です。
昼食をAS220内のFOO(d) Restaurantでとろうと向かっていたところ、ビルの隙間から巨大なピースを発見。近づいてみたら日本でもおなじみのOBEYでした。AS220のすぐ真裏にあります。今回案内してくださったShawnに「なんか関係あんの?」って聞いたら、「Shepard Fairlyは20年ほど前のAS220の生徒だったんだ」と。まだピースは新しく、左下のキャプション(?)には2010年8月14とあるのでほんのつい最近のモノ。母校に錦を飾ったといったところでしょうか。
それにしてもこのピースが描かれていたのは銀行の建物の側面・・・。日本だったらありえないだろうなぁと思いながら、“Creative Capital”を名乗るProvidenceの底力を感じます。
午後はBostonに戻り、貧困層黒人街の中にある世界最古のFablabの一つ、South End Technology Center Bostonを視察。ここはクリエイティブ、というよりエデュケーションにウェイトをおいてて、コンピュータを購入できない地元の黒人たちにとって、デジタルの“入り口”として機能してきたそうです。“レッスン”ではなく、“クリエイション”で教育を促すところに、成功の鍵がありそう。施設を案内してくれたEd Baffiは、最近Make Magazineでも紹介されていたModkitの開発者。中学高校にも行かず、独学でFablabに携わり、その功績が認められて今年からMITに在籍しているとか。地元の黒人の子供達にとっても彼はヒーローのようです。
どんな機材を使っているか、どんな成果物があがっているかよりも、施設内に自然と漂う“反骨心”。単なる趣味ではなく、自らの生活を向上させるツールとして、地元にしっかり定着しているところが何よりの強みなんでしょうね。
Phantom Limb / Spatial Shift

先日、森美術館で開催中の小谷元彦「幽体の知覚」展に行ってきました。最近の”Hollow”シリーズや、”9th room”も良かったのですが、個人的には”SP2 New Born”シリーズが、展示空間も含めて良かったな、と。
美術館やギャラリーの真っ白な空間を、俗に「ホワイトキューブ」といいますが、”SP2 New Born”シリーズの展示空間はその真逆で、「ブラックキューブ」でした。これはどちらかというと博物館の展示形態に近く、「動物標本」を連想させるこの作品には非常にマッチした設計といえるでしょう。個人的な博物館への興味を抜きにしても、こうした展示を見ると日本の美術の未来についても考えさせられます。
先日、元水戸芸術館学芸員の森司さんとのお話でも非常に興味深かったのですが、いわゆる「箱モノ」としての美術館、それに対する左今のビエンナーレ/トリエンナーレブーム。一人の作り手としては、発表現場の変遷については気を張るところですが、実際のところどうなっていくのだろうか?
自身が帰国子女なので、「ローカル/グローバル」については昔から考えてきたことですが、森さんからも言われてたどり着いた結論としては、「今いる場所がローカル」というものでした。ただ、これは帰国子女という特殊な生い立ち(いずれ特殊でもなくなるでしょうが)がそう思わせるのではなく、流通や移動が一層激しくなるであろう未来においては、いわゆる「地元意識」という考え方自体が「グローバル化」するのではないかと思うのです。だから「地元」という言葉が内包する範囲に留めれば、「=今いる場所」になるのではないかと。
作品の発表場所も、正直なところ「どこでもいい」のです。もはや芸術や芸術家が「特別」とか「カッコイイ」とされる時代ではなく、どこにでも作家は居て、どこにでも作品が在る。作品とそうでないものの境界が曖昧な未来。サイト・スペシフィックもさらに超えたところとしての単なる「サイト」に。美術館に限らず、商業施設、病院、廃墟、工場、ダム、競馬場、個人住宅・・・、どこに「在って」もいいし、どこが「成って」もいい。人に見てもらってナンボの世界なので、作品単体の魅力ももちろんですが、「集客力」に焦点を当てた時に、「場」についてはまだまだ可能性があるなぁ、と思います。
Theo Jansen + Me

現在日本科学未来館で開催中のテオ・ヤンセン展のアートクロストークに行った際に撮ってもらいました。本人はメチャクチャ気さくなおっちゃんです。
現在「博物学」をサブテーマに制作している自分にとって、テオ・ヤンセンは大いに参考にしている作家さんの一人。展示は主催するフジテレビの、いわゆる「テレビ的なノリ」が強くて好きにはなれませんが、作品自体は本当に揺らぎがない。
Expanded Photo

単なる写真同好会ではなく、ハード面も含めて写真表現の拡張を目指しているコアな集団。
















































