PENESTRATORIUM

K.Inoue online portfolio

The Mirror

 

「アンビバレンス=二律背反」という言葉がある。例えば一つの物事に対して「嬉しくもあり、また悲しくもある」といった、本来相反する「感情」を同時に感受する事。こうした不可解な感覚を「アンビバレンス=二律背反」という。

こうした感覚はきっかけとなる物事に対して客観的に接し、なおかつ複数の視点から眺めた時にのみ感じる。しかしそれによって抱いた「感情」それ自体は、まぎれも無く主観そのものである。複数の主観的感情が心の中に同時に共存する。主観的感情とは、少なくとも自身にとって偽りではない。本来相反する感情が共存しても、そのどちらも等しく偽りではなく、まさに心の不可解さを示す一例だといえる。

The Mirrorは、鑑賞者の「心を映し出す鏡」である。心は時に自らにも理解しがたく作用し、また思うがままに扱い易いとはいえない。その不完全さに時に苛立ち、あるいは嘆き悲しむ事もある。このくすんだ「鏡」は肉体を映す鏡としては不完全だが、そこに映る姿も一つの真実である。鏡は鑑賞者に対して静かなソナー音を発する。その音に導かれて、自らの心の不完全さの源を鏡越しに見出してほしいと思う。

鏡を使うとき我々は必ず「何か」を探し、確かめている。窓という「目」の無い潜水艦にとってソナー音はまさしく目の代わりとなり、同じく「何か」を探し、確かめるために使われる。この作品は「鏡」と「ソナー音」という全く異質ながらも、どこか似た目的をもつ2つのモチーフを作品内に共存させ、「心の不完全さの源」を探すというコンセプトからなっている。

2006
Installation

 


 

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